★冠動脈病変前後の圧力の比であり、その冠動脈病変の重症度を表し、治療適応決定の判断材料となる。

◎循環器は専門的な話が多いかと思います。FFR (fractional flow researve)は循環器内科医の中では基本的な話ですが、大学の授業ではそこまで触れられることは少ないかと思います。FFRとは何か、どう使われるか、何が問題か、簡単に説明します。


■労作性狭心症の治療判断

●労作時の胸痛があり、冠動脈造影検査冠動脈の一部が細い場合病変がある場合)、狭心症の診断となります。なぜ細くなるかというと、動脈硬化によって動脈の中にゴミが溜まるからです。

●狭心症の治療法は、基本は内服薬による治療と、カテーテル治療(PCI)です。PCIは、細い所をバルーンで拡張し、ステントを置いてきます。細い所が治ればOKなのです。ただし、病変が多い場合やLMTにある場合などは、PCIではなくバイパス手術(CABG)の適応になります。

●さて、問題は、どこまで細ければ治療した方がよいか、ということです。動脈硬化は徐々に進行する病気です。明らかに治療した方が良いくらい細い場合もありますし、動脈硬化はあるけど治療する程細い場合もあります。そして、細さが微妙なものもたくさんあります。

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↑右冠動脈です。一番細いところは、明らかに治療した方が良いくらい細いです。しかし、そのちょっと手前のところは、微妙な細さです。仮に一番狭い所がなくて、微妙な細さの箇所だけあったとすると、治療適応となるか微妙です。


●冠動脈造影検査で見た目の細さは分かりますが、見た目しかわかりません。見た目で治療適応を決めて良いのでしょうか。実は少し前までは、見た目で治療適応が判断されてきました。

⇒最近、FFRが導入され、見た目だけでなく、数値で判断されるようになってきたのです。


■FFRとは?
●定義は、「最大充血時の、病変よりdistalの圧力 ÷ 大動脈圧」です。噛み砕いて説明します。

「最大充血時」についてです。労作性狭心症は、労作時や運動時にのみ胸痛が生じます。安静時には生じません。

▶︎冠動脈に細い所があっても、安静時に心臓が必要とする血流は十分保たれています。労作時は心臓が必要とする血流量が多くなるので、冠動脈病変があると足りず、心臓に血流が足りない状態(心筋虚血)となり、胸痛が生じます。

▶︎ですから、検査の時は、労作時の状態をシミュレーションする必要があります。具体的には、アデノシンという薬物を点滴投与します。これは血管を拡張し、心拍数を増やし、心臓に負荷を与え、労作時の心臓の状態をシミュレーションします。投与後2-3分で効果があらわれ、その状態を「最大充血」といいます。


●「病変よりdistalの圧力 ÷ 大動脈圧」についてです。冠動脈病変を越えた所の圧力を、大動脈圧(=冠動脈起始部の圧力)で割る事で、圧力の比が計算できます。これがFFRです

▶︎圧力をどうやって測るかというと、ワイヤーをその箇所に留置することで測れます。即ち、冠動脈造影検査時に測定する事ができます。圧力を測定できるワイヤー(pressure wire® など)を用います。

▶︎もちろん病変がきつい程(細い程)、病変よりdistalの圧力は小さくなり、FFRも小さくなります



■FFRの解釈は?
●複数の大規模臨床試験により、FFRが0.8未満(もしくは0.75未満)の場合、その冠動脈病変は治療した方が良い、とされています。
⇒COURAGE trial, DEFER trialなど
(controversialな点もありますが)


●つまりFFRは、治療した方が良いかどうか微妙な冠動脈病変の治療方針を決定するため、冠動脈造影検査時に施行する追加検査なのです。



■FFRの問題点は?

●まず、コストと時間がかかります。現実的には、全例に検査するほど時間はありません。ですから、治療の是非の判断に悩む場合に限って行われます。ワイヤーやカテーテルは、1つ10万円くらいします。

本来は、冠動脈病変前後の血流比で評価されるべきです。狭心症は、心臓の血流量が足りなくなる事が原因なのですから。しかし、FFRは血圧の比です。圧と流量は、オームの法則により(V = I*R)、抵抗が一定であれば比例します。

▶︎ここでの抵抗とは、冠動脈全体の抵抗を表します。冠動脈とは、上図のような冠動脈造影でわかる大きな血管(心外膜側の血管)と、そこから分岐する非常に細い血管(心内膜側の血管)からなります。

▶︎実際には、冠動脈の抵抗は人によりかなり差があります。抵抗が大きい場合ことは、microvascular diseaseの範疇と考えられており、予後が悪い事も示されています。

▶︎FFRは、この冠動脈抵抗が一定である事を前提としています。即ち、前提が成り立たない事例が数多くあり、それがFFRの大きな問題です。


●また、アデノシンに反応しにくい(最大充血となりにくい)人も一定数います。これもFFR測定の大きな問題です。更に言えば、アデノシンで作られた最大充血が、労作時の心臓の状態を本当にシミュレーションしているか、誰も知りません。


※このように色々な問題があり、専門家は他の指標(iFR, IMR, CFRなど)を組み合わせて判断することがあります。しかしながら、現実わかっていることは、FFRを用いて冠動脈病変の治療適応を決めて診療すると、結果がよい、ということです(FFR 0.8など、大規模研究の結果から)。だからごちゃごちゃ考えず、現時点ではFFRの値をベースに治療適応を決定する事が推奨されています。