★Optimal Cutoff Levels of More Sensitive Cardiac Troponin Assays for the Early Diagnosis of Myocardial Infarction in Patients with Renal Dysfunction;Circulation 2015;131
■Intro
・NSTEMIはトロポニン上昇が診断の決め手になるが、慢性腎不全があると難しい場合がある
…99パーセンタイル以上のTn上昇はCKD患者の40%にみられる
(99パーセンタイル以上がMIの診断基準)
■Method
・APACEというコホートの中での観察研究
…腎機能障害の有る無しで、急性心筋梗塞診断に至った患者の初療時のTn値を比較
…eGFR<60をCKD患者と定義
・18歳以上で発症12時間以内のACSを疑わせる症状の患者を対象
⇒透析は除外
⇒腎機能正常2366人、腎機能低下447人
⇒7種類のアッセイでTnを確認
+その他所見を合わせて、2人の循環器内科医が診断を確定(不一致の場合3人目が確定)
⇒退院後、3,12,24ヶ月間電話でフォロー
■Result
●患者背景
・腎機能障害がある患者は、多くの因子で無い患者と異なっていた
・AMIはCKD群で36%、CKDなし群で18%であった
●初療時のTn値
・全てのアッセイでCKD群の方がTnの値が高かった
・一定の割合で、MIの診断でなかった人もTnが99パーセンタイル以上の値であった
…アッセイ毎に12-71%まで
●eGFRとTn値の関係
・r=-0.448〜-0.222で逆相関の関係にあった
・TnTの方がTnIより相関が強かった
●診断の正確性
・AUCで0.87-0.89(3時間後値では0.91-0.95);アッセイ間で差はなし
⇒腎機能が悪い程、AUCが低い傾向
・hsTnは感度が高い(77-98%)が、その分特異度が低かった(32-89%)
●CKD患者のOptimal cut-off(ROC曲線から算出、99パーセンタイル値と比較)
・Abbott-Architect s-cTnI:1倍
・Siemens Ultra s-cTnI:1.2倍
・Beckman-Coulter Accu s-cTnI:0.9倍
・Roche hs-cTnI:2.1倍
・Abbott-Architect hs-cTnI:1.1倍
・Siemens hs-cTnI:3.6倍
・Beckman-Coulter hs-cTnI:2.8倍
●予後
・2年生存率は、CKD患者で79%、そうでない患者で96%
・AMI患者での生存率は、CKD患者で67%、そうでない患者で85%
■感想
・アッセイ毎に具体的なcut-off値を示したのは、具体的で臨床活用しやすい、面白い結果。但し、もともとの母集団は大人数でありそこが重要であるものの、腎機能障害がある患者数は少なく、更にアッセイ毎に7分割されてしまうのが弱点。そこまで人数が多くなければ、cut-off値は参考程度となってしまう。
・また、この値を基準としてNSTEMIと診断してよいのかは疑問。そもそもSTEMIをinclusionしている事が問題。日本では、STEMIは採血結果を待たずに緊急カテとなるのが普通なので、トロポニン値が問題となる事が無いから。
・ただ、そもそも99パーセンタイル値というものが、施設によっても異なる事が問題なのであった。正確なNSTEMI診断なんてできないのは当たり前。ただ、トロポニン値が上限ギリギリで迷う、といったシチュエーションはまれ。AUCで言えば、何より3時間後に再検することが重要。