★遺伝子異常の頻度は意外と多い。
■遺伝子異常
●若年発症成人型糖尿病(MODY:maturity onset diabetes of the young)
・常染色体優性遺伝、25歳未満発症で自己抗体陰性の糖尿病
…糖尿病の2-5%
⇒基本的に膵臓β細胞の異常
⇒ヘテロな概念で、原因となる遺伝子異常により臨床像が異なる
⇒管理が異なるため、遺伝子検査で1,2型糖尿病と区別した方が良い
…若年発症の1型っぽいが、各自己抗体が陰性の場合など
①Hepatocyte nuclear factor-4α:HNF4A
・肝細胞と膵β細胞に発現
⇒変異により、高血糖に対するインスリン分泌能が低下する
=MODY1
・最初はSU薬によく反応するが、進行してインスリン療法が必要となることあり
②Glucokinase遺伝子
・解糖系で「グルコース→グルコース-6リン酸」に必要
⇒変異で高血糖+インスリン分泌の閾値が上がる
=MODY2
・安定した血糖高値で、心血管合併症は少ない
⇒食事療法のみでコントロールできることが多い
③Hepatocyte nuclear factor-1α:HNF1A
・MODY3
…尿糖が初期にでやすく、スクリーニングに使える
…臨床像がMODY1に似ているが、こちらはSU薬のみでよく反応する
④その他遺伝子異常
・IPF1, HNF1B, NEUROD1, CEL, INS, ABCC8などの変異はMODYの一型といわれる
●他のβ細胞遺伝子変異
・sulfonylurea 1 receptor subunit (SUR1)変異、ミトコンドリアDNAの点変異など
⇒MODYとは別型と考えられる
●ミトコンドリア糖尿病(MIDD:Maternally inherited diabetes and deafness)
・tRNAの点変異
⇒母系遺伝の糖尿病
・30-40歳発症の糖尿病+感音性難聴+心臓の伝導障害
・メトホルミンは乳酸アシドーシスのリスク高く、避けるべき:インスリン使う
・CoQ10の補充が効果的かも
●インスリン関連
・インスリンの構造、インスリン受容体の異常が、様々な臨床像を呈する
…多嚢胞性卵胞症候群、脂肪異栄養症(リポジストロフィー)、黒色表皮症など
●Wolfram症候群
・WSF1:膵β細胞と神経の小胞体膜に発現している蛋白を制御
⇒この変異
⇒β細胞、バソプレシン分泌に関わる神経に異常をきたす
・臨床的にDIDMOAD
…diabetes inspidus, diabetes mellitus, optic atrophy, deafness
■膵外分泌腺の異常
●嚢胞性繊維症
●遺伝性ヘモクロマトーシス
●慢性膵炎
●繊維性石性膵性糖尿病
…熱帯性膵炎の合併症
…乳児期からの熱量、蛋白質、亜鉛、銅の摂取不足、シアン産生物質の摂取が原因
■内分泌疾患
●Cushing症候群
●先端巨大症
●褐色細胞腫
●グルカゴン産生腫瘍
●ソマトスタチン産生腫瘍
●甲状腺機能亢進症
■その他
●薬剤性糖尿病
●ウイルス感染
…コクサッキーウイルス感染がGAD抗体出現と関連ある、との話
⇒人間での因果関係は不明瞭
●妊娠糖尿病
●全身硬直症候群(stiff-person syndrome)
…抗GAD抗体による疾患
⇒1型DMと比較し力価が100倍くらい高く、エピトープも違う
●抗インスリン受容体抗体
…アゴニストとして作用して低血糖+インスリンの結合を阻害して糖尿病
参照 UpToDate