★代償機構により、体内での水の分布の異常となる。
◎SIADHは医学生にはなかなか理解しづらい疾患です(自分はそうでした)。ADHの異常産生という病態で、体内の他の代償機構は正常であることを理解すると当然です。
■SIADHの病態
●下垂体からADH(抗利尿ホルモン、バソプレシン)がですぎる
⇒腎臓の集合管で水再吸収が亢進
(⇒それなら尿量は低下しそうに思えてしまう)
⇒血管内の血液が希釈され、低ナトリウム血症となる
⇒低Naによる意識障害,脳細胞浮腫による頭蓋内圧亢進が問題となる
■なぜ尿量は低下しないか?
●循環血漿量が調整されることを理解する事が大事です。
①再吸収された水は血管内ですが...
⇒浸透圧勾配により吸収した水の一部は細胞内へいきます
⇒この点で、循環血漿量(血管外血液量)の増加は抑えられます
②ある程度循環血漿量は増加しますが...
⇒RAS系(レニンアルドステロン系)が抑制されます
※RAS系は循環血漿量が減少すると亢進し、アルドステロンにより尿細管でのナトリウム再吸収がおこなわれ、血管外血液量を増加させます(代償機構)
=尿量を保とうとされます
⇒代償機構が働き、循環血漿量の増加が抑えられるということです
(⇒これは、SIADHで尿中ナトリウム濃度が高くなる理由にもなります)
③また、心房利尿ペプチド(ANP)にも血漿量代償作用があります
⇒循環血漿量の増加を感知し、ANPが産生されます
⇒ANPの作用により、腎臓からのナトリウム+水排泄が促進されます
=尿量を保とうとされます