★心筋細胞、心筋、左室それぞれのレベルで悪循環が生じること。
簡単に言うと、心臓が硬くなってほぼ不可逆的に機能が落ちてしまうこと。
リモデリング予防こそが、心不全・心筋梗塞二次予防の要点です。
心筋細胞の変化・心筋変性・左室構造の変化、というミクロ→マクロの観点から病態生理を説明していきます。
■心筋細胞の変化
心筋細胞レベルでは、細胞肥大と収縮能力の低下が生じます。
①細胞肥大
<マクロな観点>
●後負荷=血圧上昇
⇒収縮期の壁ストレス↑
⇒心筋が縦に増殖=厚くなる(中心性肥大)
●前負荷=volume overload
⇒拡張期の壁ストレス↑
⇒心筋が横に増殖=内腔が拡張する(遠心性肥大)
<ミクロな観点>
●機械的刺激、NE/アンギオテンシンⅡ、炎症性サイトカイン、成長ホルモン、活性酸素
⇒心筋細胞の遺伝書き換え
⇒心筋細胞肥大(ミトコンドリア増殖、筋繊維増殖、最終的に細胞小器官破壊)
⇒胎児性遺伝子発現、通常の遺伝子発現↓(fetal gene program)
⇒心筋細胞機能障害
②興奮-収縮連関の変化
・不全心筋細胞
⇒細胞内Ca↑+Caがなかなかはけない
(詳細は複雑なため略)
⇒心拍数が多いとき、十分に収縮できない
※通常は、心拍数が多い程心拍出量 (=心拍数×一回拍出量)が増えるが、心不全の場合そうでもないということ。
■心筋変性
心筋の変性と細胞外基質の変性が生じます。
①心筋
・炎症、虚血、NE↑やRAAS系↑、活性酸素
⇒心筋細胞のネクローシス、アポトーシス、オートファジー
⇒心筋量減少
②細胞外基質
・同様のトリガー
⇒小繊維合成/分解↑、cross-linking変化など
(詳細は複雑なので略)
⇒①壁の再配置による左室拡大、菲薄化
②左室収縮のdyssynchronyによる収縮不全
■左室構造の変化
・薄くなる+球形に近くなる
⇒縦方向への負荷が増大
・LV拡張自体が収縮に必要なエネルギーを多くする
・壁ストレス
⇒特定の遺伝子活性化(アンギオテンシンⅡ、TNEαなど)
・拡張末期圧高くなる
⇒心内膜下虚血、活性酸素↑
・拡張により乳頭筋が引っ張られ、僧帽弁閉鎖不全を起こす
⇒さらに左室前負荷を増やす
※これらにより悪循環となる
参照 Brawnwald