★心不全では交感神経亢進が悪く、それを抑制するため。
◎心不全の治療4本柱の内の一つがβ遮断薬。
その作用メカニズムとエビデンス、具体的な使い方を解説しました。国試では頻出。
なお他の3本とは、SGLT2阻害薬、ARN阻害薬、MR拮抗薬ですね。
心不全にβ遮断薬が効く根拠
β遮断薬には交感神経抑制作用があります。
すなわち、
・なぜ心不全で交感神経が亢進するか
・なぜ交感神経亢進が心不全に悪いか
が理解できれば良いことにになります。
順に解説していきます。
■「心不全⇒交感神経亢進」の機序
通常時の血流循環と交感神経系の制御:
・内頸動脈/大動脈弓の圧上昇、心肺の機械受容体の圧低下:交感神経抑制
・末梢の化学受容体と筋の代謝受容体の反応(末梢循環が悪いと):交感神経が興奮
・心不全状態だと、動脈/心肺の圧受容体反射の抑制が低下します。
⇒交感神経↑
■交感神経亢進が心不全に悪い理由
・交感神経↑
⇒交感神経終末からのノルアドレナリン(NE)放出上昇により血中へNE漏れ出る
+NE再取り込み低下
⇒血中NE濃度↑
⇒心臓のNE取り込み量↑
⇒β1刺激:心拍数↑、心収縮力↑
α1刺激:末梢血管収縮、心収縮力↑
⇒①心筋酸素需要↑、虚血増悪、肥大
②催不整脈
③RAAS系亢進
*どれも明らかに悪いですね。
・また、副交感神経不活性化
⇒NO↓、炎症↑、リモデリング↑
■β blockerの効果と使い方
引き続き、β遮断薬のエビデンスと具体的な使い方を紹介していきます。
知っていて損はなし!
β遮断薬のエビデンス
様々な研究で、β遮断薬は特にACE阻害薬と併用すると、「左室リモデリング改善、症状改善、入院率低下、予後改善」が見込まれることが示されています。
ただしセロケン、メインテート、アーチストに限ります。
→実臨床では、ほとんどがメインテートかアーチストです。
*最近はACE阻害薬よりもARN阻害薬(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)の方が良いというエビデンスが出ており、そちらにシフトしつつあります。
代表的なβ遮断薬の研究は:
・メトプロロール(セロケン):死亡率を34%下げる(MERIT-HF study)
・ビソプロロール(メインテート):死亡率を32%, 入院率を30%下げる(CIBIS Ⅱ study)
・カルベジロール(アーチスト):死亡率/入院率を下げる(様々なstudy)
※なお他のβ遮断薬(プロプラノロールなど)は、予後を悪くするか変えない、とされています。
■β blockerの使い方
言うまでもないですが、β遮断薬は陰性変力・変時作用があるので(拍出量を下げるので)、急に高用量を使うと急性心不全となり得ます!
ゆっくり増やしていくのがコツ。
<具体的な手順>
・利尿薬の量を調整してから(しながら)、少量から始め、ゆっくり(2週間以上かけて)増量します
⇒心不全増悪する場合、開始/増量して3-5日でわかってくる
⇒この場合、利尿薬増量して対応するか、β遮断薬を減量する
※普通ACE阻害薬と併用し、この場合ACE阻害薬は少量で良いとされる
※なお、β遮断薬は多い方が良いかははっきりとしていない
参照 Brawnwald