★ATをトレッドミル等の運動負荷で測定し、そのレベルのMETsの運動を推奨する。
◎奥が深い分野です。ここでは、基本の解説。
■運動負荷の実際
●準備
・安静時に以下のパラメーターを確認
…酸素摂取量 3.8ml/min/kg (1.1 METs)、VE 8-10l/min、ガス交換比 0.84
●試験終了の目安
・ST変化、重篤な不整脈、血圧高値など
⇒なければ、自覚的最大負荷(ボルグスケールで19-20)まで
※エネルギー代謝の面で最大負荷となるのは、ガス交換比1.2なので、これも参考にする
(客観的所見)
■重要な基準点
●anaerobic threshold (AT)
・運動強度の増加する過程で、エネルギー産生様式が変化する点
(有酸素運動から無酸素運動へ移行する所)
・AT以上の運動をすると乳酸蓄積し、結果的に運動を中断することとなる
…AT以下の運動であれば持続可能である(筋肉痛などエネルギー以外の因子を除き)
⇒日常の活動レベルを表す指標、心疾患のfunctional capacityを表す指標として用いられる
⇒AT程度の運動を、1日30分以上、週3-5日行う事を推奨する
…AT時のワット数や運動強度を参考にMETs換算することが多い
※高血圧(運動時血圧↑↑)やAf(正確に測定できない)の場合、参考として用いる
●respiratory compensation (RC)
・運動によるCO2産生が増えると、ある所で代謝性アシドーシスとなる
⇒呼吸性代償が働き、呼吸数増える
⇒この点がRCであり、RC出現後は短時間の内にアシドーシス進行する
=運動強度が生理学的に最大のレベルに達したと考える
■運動負荷時の呼気ガス変化の原理
●原則、変化の流れ
・運動強度は呼気酸素濃度(VO2)と相関するとされる
⇒VO2 maxは、生理学的にその個人がもつ最大運動能力を表す
※peak VO2は、試験中に記録された最大のVO2であり、必ずしもmax VO2ではない
⇒必ず測れる指標なので、心不全の生命予後や治療効果判定に用いられる
・有気代謝でCO2産生される
+嫌気代謝も生じると乳酸産生、乳酸が水とCO2に分解される
⇒無酸素運動では呼気CO2濃度(VCO2)がVO2より早く増加
⇒分時換気量(VE)はVCO2と相関するので、VE/ VO2も上昇
⇒よって、VE/ VO2の最低値がATを表す
・VCO2が更に増えると、代謝性アシドーシスとなる
⇒呼吸性代償としてVEは更に増加する
⇒よって、VE/ VCO2の最低値がRC(呼吸性代償の開始点)を示す
…この時、終末呼気二酸化炭素分圧(PETCO2)が下降し始める
●AT決定のクライテリア
①ガス交換比(R)/ VO2 の上昇点
②VCO2/ VO2 の上昇点
③VE/ VO2の上昇点(VE/ VCO2が増加しない所で)
④VE/ VO2の上昇点
⑤PETO2 の上昇点(PETCOC2が変化しない所で)
⇒これら総合的にATを判断する
⇒AT時のワット数、運動強度をMETs換算して、指導の参考にする
■ワット数→METs(指導の目安)
METs |
運動負荷試験 |
ワット数 |
歩く早さ |
運動 |
1〜2 |
|
|
1-2 km/h |
食事、洗面、自動車運転 |
2〜3 |
stage 0 |
|
3 km/h |
調理、モップがけ、乗り物に立ち乗り、 |
3〜4 |
|
25 |
4 km/h |
シャワー、炊事、洗濯、ふとん敷き、 |
4〜5 |
stage 1 |
50 |
5 km/h |
軽い大工仕事、草むしり、セックス、 |
5〜6 |
stage 2 |
75 |
6 km/h |
階段、農作業、アイススケート |
6〜7 |
stage 3 |
100 |
4-5 km/h |
シャベルで掘る、雪かき、水汲み、 |
7〜8 |
stage 4 |
125 |
8 km/h |
水泳、エアロビクス、登山、スキー |
8〜 |
stage 5 |
150 |
10 km/h |
なわとび、各種スポーツ |
参考 狭心症・心筋梗塞のリハビリテーション(基本の本)