呼吸器 感染

伝染性単核球症;病態からの鑑別、どれだけ診断にこだわるか

★風邪症状+肝脾腫+AST/ALT↑で疑い、まず異好性抗体を取る。

■定義
伝染性単核球症 (IM)発熱+咽頭炎+リンパ節腫脹を呈す症候群
⇒後に、血中リンパ球↑、異型リンパ球(+)、EBウイルスの関連が示された
⇒現在では主に、EBV感染症のことをさす事が多い
・高率にリンパ節腫脹、肝脾腫を呈す


■IMの病態

咽頭上皮細胞へのEBV感染
⇒増殖
⇒分泌物にEBV含まれる
⇒分泌物を介し、咽頭のリンパ豊富な組織にいるB細胞へ感染
B細胞により、全身のリンパ組織へ感染伝播
⇒全身性リンパ節腫脹、肝脾腫
※このため、潜伏期間が長い;4-8週

●感染したBリンパ球は抗体を産生
EBVに体する抗体、異種親和性抗体(EBVと反応しない抗体)
⇒まれに、好中球/ 赤血球/ 血小板に対する抗体も産生する 
⇒合併症の原因となる
⇒合併症
 …脾破裂、ギランバレー症候群、顔面神経麻痺、溶血性貧血など

●NK細胞、細胞障害性Tリンパ球も活性化する
⇒これらが、異型リンパ球として血液検査で現れる


■鑑別診断
●heterophile-negative mononucleosis-like syndrome

 …異好性抗体陰性の伝染性単核球症様症候群
A群β溶血性連鎖球菌
⇒上記三徴を呈すが、全身性のリンパ節腫脹や肝脾腫を呈さない
 ※口腔内溶連菌(+)でもIMは否定されない
サイトメガロ
 ⇒IMとかなり似るが、咽頭炎は軽度な事が多い
HIV一次感染
 ⇒皮膚粘膜潰瘍がある場合、より疑われる(IMではまれ)
  皮疹が高率に見られる(IMではまれ)
B型肝炎
トキソプラズマ
 ⇒発熱+リンパ節腫脹;咽頭炎や肝脾腫は起こさない
HHV-6, 7
 ⇒大人ではまれだが、報告あり


■診断

・症状が最も重要
AST, ALTの上昇は強く示唆する
異好性抗体(heterophile antibody)
 …他種の抗原に反応する抗体;羊/ 馬/ ヤギ/ 牛の赤血球(monospot testなど)
⇒迅速キットは、感度85%、特異度100%
⇒伝染性単核球症の内、10%が陰性
 =上記の鑑別診断へ

●つまり、症状から伝染性単核球症を疑った時、異好性抗体を取る
ほとんど陽性
⇒陰性の場合、鑑別も含めて血清検査する
・EBV:VCA抗体(カプシド):IgMは急性感染、IgGは既感染を意味
    EBNA(核):感染後6-12週で上昇。急性感染でないことを意味
    EA(early antigen):抗D抗原IgGは急性感染の指標となりうるが、微妙
⇒上記鑑別診断の抗体も、適宜提出する
特に妊婦は、崔奇形性のリスクあるためちゃんと調べる
 …EBVの妊娠への影響はないとされている

※アメリカではきちんと診断をつけ、しばらく運動制限するよう言うとのこと
 …伝染性単核球症は、まれに脾臓破裂を合併するため;物理刺激が誘因になる

参照 UpToDate

-呼吸器, 感染