★基本リンゲル.
◎生理食塩水は多量投与すると代謝性アシドーシスを起こします。それを回避するため、開発されたのがリンゲル液です。
■生理食塩水
●0.9%NaClのことです。これは以下の特徴があります。
①血漿より高張です(浸透圧:290 vs. 308)
⇒1000ml投与で1100ml分となります
…これが血管内:間質=1:3で分布
⇒つまり1000ml投与で、血管内に275ml分布します。
②間質にナトリウムが貯留します
⇒浮腫の原因となります
…これはリンゲル液より著明です
③大量投与でアシドーシス起こします
この説明は以下の通りです。
・SID(strong ion defference):細胞外液中の,強酸・強塩基の差です
…血漿[Na]-血漿[Cl] と等しい(他に強いイオンがないため)
・水からH+とOH-が電離する
⇒ SID+[H+]-[OH-]=0
[OH-]≒0より
SID+[H+]=0
・血漿SID=140-103≒40
・以上が前提です
⇒これに0.9%生食(SID=0)を大量に入れます
⇒血漿SID↓
⇒血漿[H+]↑
⇒アシドーシス
ということです。
■○○リンゲル液
・アシドーシスに対応するため,生食に変わり,乳酸リンゲル(ハルトマン液)が開発されました.
⇒乳酸は肝で代謝されます
⇒肝不全では、やはり大量投与でアシドーシスとなってしまいます。
・肝不全でも使えるよう,酢酸リンゲルが開発されました.
⇒さらに体液に近い組成としたものが重炭酸リンゲル液です。
・○○リンゲル液:Na130,Cl109,K4,Ca3,有機酸28を含みます(Caはイオン化Ca[mEq/l])
⇒有機酸はHCO3-に代謝されます
(肝で,クエン酸回路による)
⇒一方、血漿:Na140,Cl103,K4,Ca4,HCO3 25です
⇒よって、生食より生理的で,アシドーシスきたしません。
※乳酸リンゲルで,乳酸アシドーシスは来さないのか?
これは当然の疑問ですが、健康人はおこしません.
理由は、
・乳酸クリアランスが0の患者(ありえませんが)に,1リットルの乳酸リンゲルを静注したとします。
⇒乳酸が4.6mM/l上昇します。
⇒この程度なので,実際に乳酸アシドーシスで困るほど乳酸値は上昇しません。
・リンゲル液はイオン化Ca含みます
⇒輸血中のクエン酸に反応し,凝固起こしえます
⇒なので、「輸血中にメインをどうするのか」問題が病棟で発生するのです。
※ただし投与時間によります(参照:http://blog.livedoor.jp/megikaya/archives/31289235.html)
■細胞外液の使い分け(例)
①何もなければ,○○リンゲル液
②減っているものを補うという意味で
嘔吐=HCl喪失:生理食塩水
下痢=HCO3喪失:○○リンゲル液
③乳酸アシドーシス
⇒酢酸リンゲルか,重炭酸リンゲル
④高Ca血症による脱水
⇒生理食塩水(Ca入っていないため)
⑤腎不全時
⇒生理食塩水(K入っていないため)
参照 ICU Book
名著。