★下大静脈-三尖弁輪間峡部(CTI:cavo tricuspid isthmus)ブロックライン作成
◎通常型心房粗動(common AFL, atrial flatter)のアブレーションについての解説です。実際にどういう所を見ているのでしょう。詳細は教科書を参考下さい。
●勉強を始めるには、研修医にはちょうど良い。かなり深い所まで書いてあります。
●かなりしっかりした教科書。やや難しいですが、勉強になります。
■定義
●心房粗動は、粗動派(のこぎり状の心房波)を認める上室性頻拍です。通常型かどうかが大事です(通常型は比較的ablationが簡単だから)。
①通常型心房粗動(common flatter)
・Ⅱ,Ⅲ,aVFで下向き、V1で上向きの粗動波のものです。
⇒分かりにくい時(2:1伝導など)は、頻拍中にアデホス(ATP)を打ちましょう。房室結節を介するリエントリーでないので停止しませんが、QRSが一時的になくなり、粗動波が分かりやすくなります。
・機序はリエントリーです。三尖弁輪を中心として、反時計回りに興奮が旋回します。
⇒なので、下大静脈-三尖弁輪峡部(CTI);リエントリー回路の一部 を焼くことで、興奮が回らなくなります。
②非通常型心房粗動
・通常型心房粗動以外の心房粗動をいいます。
…機序は様々です。リエントリー(主にincisional reentrant tachycardia)、自動能亢進、撃発活動など。三尖弁輪を逆回転(時計回り)に興奮が旋回するものも含まれます。
※心房rate<240bpmの場合、心房頻拍と診断されます。
■アブレーション(CTI block line作成)
①電極留置
・右大腿静脈より3箇所穿刺します。
・冠静脈洞(CS)に6極カテーテル、三尖弁輪(TA)にHaloカテーテルを留置、アブレーションカテーテルを入れました(下図、LAOです)。
※電極カテーテルは色んな種類があります。
※CSカテーテルは内頚静脈からアプローチする事も多いです。
※電極は、先端から1,2…と番号がついており、1-2, 3-4,…の電位差を記録しています。
②isthmusを回路に含むことの確認
・三尖弁輪を回る頻拍か、確認します。
・まず頻拍を誘発します。Haloカテーテル(心房に留置されています)からのBurst刺激を行いました。
・頻拍中となったので、以下の手技を行います。
1. sthmusからのpacing⇒Halo, CSの電位波形が粗動のものと同じ(entrainment without fusion)
2. ペーシング後の心房粗動1拍目までの時間が、粗動周期と一致(PPI: post-pacing interval)
…回路上にある所からのpacingなので、そこからまた一回りするからです。
※明らかにcommon AFLである場合、頻拍がなかなか誘発されない場合は、これらを省く事もあります。
③焼灼
・三尖弁輪峡部をアブレーションカテーテルで線状に焼きます。
・この際、局所電位(ABL distal電位)に着目します。
1. しっかり下大静脈〜三尖弁輪を焼かなくてはなりません。まず三尖弁輪の端、右室側から焼きます。つまり、局所電位は、心室電位がしっかりとれる場所から始めます。
…しかし焼くのは心房です。つまり、「心房電位がsharp>>>>平坦 or Q波」となることを目標にします。
ですから、心房電位がしっかり取れる箇所を焼いていきます。
2. 心室側より段々心房側、下大静脈側へ引いて焼いていきます。焼くpointは、上記の通りです。
※焼いている時、アブレーションカテーテルが心筋に密着している事が大事です(そうでなければ焼けませんから)。しっかりと曲げて、カテが心拍動と同期する動きをすることを確認します。
3. 下大静脈側へ引いてくるときには、曲げを緩めます。緩める事でカテが当たる面積が増え、かつカテが落っこちることを防ぎます。
4. 完全にblock lineができると、局所電位がdouble potentialとなります!
…カテがblock lineの上にあれば、右からくる電位と左からくる電位が別に記録されるからです。
…CS pacingを行えば、片方の電位はHalo電位の前、片方の電位はHalo電位の後に記録されます。
④両方向性ブロックの確認
1. CS pacingを行います。
⇒焼く前は、CSからの刺激は最も近いHalo先端(1-2)に最も早く到達する
⇒焼いた後は、Halo 1-2に直接届かないため、Halo最後部(23-24)に最も速く到達する
=左から右への伝導が切れた証明(一方向性ブロック)
2. TA pacingを行います。
・Halo 1-2と7-8からペーシング(differential pacing)
⇒CSまで伝わる長さを比較します。
⇒block lineができていれば、Halo1-2よりHalo7-8の方が早く伝わります。
=右から左への伝導が切れた証明(両方向性ブロック)
以上で手技を終わります。
参照 EPS, EPカンファレンス