麻酔・外科・胸部外科

大動脈解離の具体的な分類、管理、治療

★分類、すぐにβ遮断薬で循環管理。

■まず、すぐに分類する
●Stanford分類
・A型:上行大動脈に病変があるもの
・B型:A型でないもの

●似ている他の病態

壁内血腫
 …大動脈を栄養する血管の損傷。解離に準じて治療する。
・血腫を認めない内膜のみの損傷
 …現状では画像で解離と区別つかない。手術してみたらそうだった、という類。

※DeBakey分類(内科診断/加療には寄与しない外科目線の分類)
・Ⅰ型:上行から解離し、少なくとも弓部を巻き込むもの
・Ⅱ型:上行から解離し、上行に限局するもの(3分枝を巻き込まない)
・Ⅲ型:下行から解離するもの(稀に弓部に解離が及ぶ)

■急性期治療
●ICU入室
●疼痛コントロール;モルヒネがよい
●血行動態不安定、気道×の場合、挿管

循環管理
HR60以下に;β遮断薬(インデラル)、1-10mgボーラス+3mg/hで開始
sBP100-120に;β遮断薬で不十分な場合、ニトロプルシド 0.25-0.5μg/kg/minで開始
 …ニカルジピン、ジルチアゼム(ヘルベッサー)でもよい
必ずβ遮断薬から投与する;血圧↓に伴う交感神経↑を防ぐため

低血圧の場合
⇒原因を探す;出血、タンポナーデ、急性弁膜症(AR)、心筋梗塞
※陽性変力作用を持つ薬剤はダメ;share stress↑で解離を助長する
※心タンポナーデに対する心嚢穿刺も微妙;出血、ショックを助長する


■根治療法
①短期リハビリコース(15-16日)の適応

●以下全てを満たす場合
Stanford B型
・偽腔閉塞型でULPがない、または偽腔開存型で真腔が1/4以上
・DIC合併なし(FDP≦40)
・他、重篤な合併症なし

②標準リハビリコース(19-22日)の適応

●以下全てを満たす場合
Stanford A型の偽腔閉塞型、もしくはStanford B型
・大動脈の最大径≦50mm
・臓器虚血がない
・DIC合併なし(FDP≦40)
・他、重篤な合併症、不穏、縦隔血腫、タンポナーデ、右側優位の胸水がない場合

③緊急手術の適応

●以下のいずれかを満たす場合
Stanford B型
・臓器虚血あり
・コントロール不良の高血圧、疼痛
・解離の進行;ふつう疼痛再発でわかる
・瘤化、破裂
・Marfan症候群
Stanford A型
・進行性の解離に伴う脳梗塞がない場合
…脳出血のリスクが高いため

※その他の場合、個々に対応。

■慢性期の治療
偶発的に見つかった、無症候性の解離もこのカテゴリーとなる

●2週間以上経過し、安定しているもの
A型、B型に問わず内科管理の適応
●外科治療が推奨されるのは、以下の場合
・破裂
・大動脈径の急速な拡大;5mm/6ヶ月
・径55-60mm以上
・径50mm以上のMarfan症候群
・偽腔開存型解離+薬物でコントロール不良の高血圧

参照 日循ガイドライン、UpToDate

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