★PSVTの鑑別ですが、どんなリエントリー回路かを考えると、違いがわかります。しかし〇〇っぽいとは言えますが、実際はEPSをやってみないとわかりません。
◎不整脈の先生がnarrow QRS頻拍の心電図を見て議論していますが、なにを考えているのでしょうか。わかりやすさを重視して説明して見ました。
■頻度の高いPSVT
●正方向性AVRT(房室回帰性頻拍)
・心房と心室の間にある、副伝導路(Kent束など)を原因とします。
…副伝導路は伝導が早いです
・「心房>房室結節>心室>副伝導路>心房>…」とリエントリー回路を形成します。
⇒心室収縮の後、すぐに心房収縮します
⇒QRS波の後に逆行性P波がきます(90msec以上離れます)
=逆行性P波が見えることが多いです
・通常、頻脈時に心拍数がかなり速いです。180bpmとか。
●通常型AVNRT(房室結節回帰性頻拍)
・房室結節二重伝導路を原因とします。
…房室結節周囲に、心房と房室結節をつなぐ伝導路が2本あるということです。
⇒片方の伝導は速く(fast pathway)、片方は遅いです(slow pathway)
・「心房>slow pathway>房室結節>fast pathwayと心室>fast pathwayから心房へ>…」
⇒心室収縮の最中に心房が収縮します
⇒QRS波の中に逆行性P波がきます
=S波に隠れ、はっきりと逆行性P波を特定できないことが多いです(偽性S波)
・頻脈時にも、脈はそれほど速くなりません。130bpmとか。
※しかし、これは例外があります。lower common pathwayです。
⇒slow pathwayとfast pathwayからなる回路がどれほど大きいか、という問題です
⇒大きければ周期は長くなるので、脈拍数が少なめになります
⇒lower common pathwayがあると、回路が小さくなるので、脈拍数が多めになります
■稀な他のAVRT
●逆方向性AVRT
・逆に、「心室>房室結節>心房>副伝導路>心室>…」と回旋します。
⇒心房収縮の後、すぐに心室が興奮します
+心室は副伝導路のあるところから興奮するので、wide QRSとなります
(例外:副伝導路が中隔=His束近傍にある場合は、narrow QRSとなります)
⇒ですから、QRS波後のP波が来るまで時間がかかります
=long R-P'
●副伝導路間AVRT
・「心房>副伝導路>心室>副伝導路>心室>…」と回旋します。
・非常に速い頻拍となります。
・逆方向性と同じく、wide QRS頻拍となります。
■稀な他のAVNRT=非通常型AVNRT
①fast-slow型
・「心房>fast pathway>房室結節>slow pathwayと心室>slow pathwayから心房へ>…」
⇒房室結節から心房までかかる時間が長くなります
⇒QRS波からP波が来るまで時間がかかります
=long R-P'
②slow-slow型
・全部slow pathwayですが、fast-slow型のslow pathwayよりは伝導速度が遅くないです。
⇒long R-P'まで行かず、QRS波から少し離れた位置にP波がきます。
(90msec以上です)
■δ波
●副伝導路があればデルタ波が見えます。WPW症候群です。
・デルタ波とは、
⇒副伝導路が「心房>心室」の伝導速度が早いためQ波の始まりが速くなる現象です
⇒すなわち、PQ間隔の短縮が本質です
=デルタに見えても、PQ短縮がなければ、デルタ波とは言いません。
●大事なことは、デルタ波は副伝導路の順行性伝導を表すということです。
…順行性とは、「心房>心室」の伝導のことです。
⇒正方向性AVRTを思い出していただくと、副伝導路を逆行性に伝導しています
⇒デルタ波は副伝導路の存在を表しますが、正方向性AVRTが起きるとは限らないということです
(WPW症候群の25%は副伝導路の逆行性伝導がありません)
●逆に、デルタ波がなくても正方向性AVRTが生じ得ます。
⇒逆行性にしか伝導しない副伝導路がある、ということです
⇒これを、潜在性WPW症候群と言います。
(正方向性AVRTの1/3は副伝導路の順行性伝導がありません)
参照 UpToDate, coronary intervention vol.13 2017