★不整脈抑制+カリウム排泄。
◎緊急治療を要する高K血症の対応方法まとめです。医師は必須知識です。
■具体的な治療の流れ
●心電図モニタリングをしつつ、以下の治療開始、1-2時間後にカリウム値再検。
①10%グルコン酸カルシウム(カルチコール、Ca 13.6meq)
・10mlを2-3分かけてiv、効果は30-60分持続
⇒ECG変化続く or 再発したら、5分後に再度投与(繰り返す)
※ジギタリス中毒の場合
…高Ca血症でジギタリスによる心毒性が助長されますが、不整脈予防を優先する!
⇒カルチコール1Aを5%Glu100mlに溶き、20-30分で投与
+抗ジゴキシン抗体投与があれば投与
②インスリン+グルコース
いくつか方法あります。
1) ヒューマリンR10単位+10%Glu500mlを60分で投与
2) ヒューマリンR10単位iv、すぐ50%Glu50ml iv、続いて10%Glu 50-75ml/h
⇒1時間後血糖再検
※ivの方がK下がりますが、低血糖が起きやすい(ためGlu持続投与します)
※Glu>250mg/dlの場合、インスリンのみ投与してもよいです
・効果は30-60分でピーク、4-6時間持続します
③ループ/ サイアザイド系利尿薬、透析
・尿中カリウム排泄を増加させます
⇒急性期に有効というエビデンスは乏しいですが、簡便で副作用ないため行います
・慢性腎不全のカリウム管理には有用です
※尿でない場合は、もちろん透析です。
④経口カリウム吸着剤
●陽イオン交換樹脂(ケイキサレート)
…大腸にてNaとKを交換し吸着します
・30gを20%ソルビトール50mlに溶いて内服
・50gを20%ソルビトール200mlに溶いて注腸
…水に溶くと腸管閉塞のリスクがあります
⇒高濃度ソルビトールにより腸管壊死を来し得ます
⇒だから20%ソルビトールに溶くのです。
・ゆるやかに効き、6時間でピーク
⇒必要あれば、4-6時間毎に繰り返し投与します
※腸管壊死のリスクがあるため、適応は以下を満たす場合のみ!
・早急に治療すべき高K血症で、すぐに透析を施行できない場合
・カリウムを除去する他の方法が有効でない場合
・術後/ 腸管閉塞あり/ オピオイド内服中(壊死リスク高い)で無い場合
⇒これらの場合、GI療法継続して透析できるまで待ちます。
●新しい薬剤/治療法
・ジコニウム環状ケイ酸塩(ZS-9)
…吸収されない結晶で、小腸でNa, HとKを交換し吸着します
⇒4時間で効果出現するので、急性期にも有用な可能性があります。
・パチロマー
…吸収されないポリマーで、大腸でCaとKを交換し吸着します
⑤原因を取り除く
・腎機能低下の原因;NSAIDs、循環血漿量↓、尿路閉塞、RAAS阻害薬
※あまり推奨されない他の治療法
・β2アゴニスト
…副作用が大きい
・炭酸水素ナトリウム(メイロン)
…効果が少ない(アシデミア+高Kの慢性管理には良いかも)
■治療法それぞれの機序
●グルコン酸カルシウム(カルチコール)
・カルシウムは、高Kによる膜の不安定化を直接的に是正します。
※詳細は以下の通り
参照:https://chishiegg.com/archives/22866675.html
●GI療法
・骨格筋のNa-K-ATPaseポンプを活性化
⇒Kの細胞内取り込みを促進します
●β2アゴニスト
・GI療法と同様、骨格筋のNa-K-ATPaseポンプを活性化します
●炭酸水素ナトリウム
・pH上がる
⇒元に戻そうと、細胞内からH+がでる
⇒代わりにK+をとりこむ
※利尿薬、カリウム吸着剤は上記参照
参照 Braunwald, UpToDate, ICU book, PMID: 21832880