★微小循環障害が原因だと考えられている、割と予後良好な安定狭心症
◎胸痛があり、検査で虚血の所見があるのに、有意な冠動脈狭窄が認められない症候群のことを言います。微小血管障害です。
■Syndrome Xの定義
●労作性の狭心痛があり、負荷心電図でST低下を認めるが、CAG上有意狭窄がなく、かつ攣縮も誘発されないもの
⇒この内微小循環障害があるものを、microvascular angina (=Syndrome X)という
*微小血管障害の有無を診断するのは、ややトリッキーである。
●診断
・労作性狭心痛あり
・冠動脈造影にて30%以上の狭窄なし
・アセチルコリン負荷などで冠攣縮性狭心症は除外
・さらに以下の診断を除外する
…左室/右室肥大、タコツボ、全身性アミロイドーシス、DMによる微小血管障害
・微小血管障害があることを証明:CFR, IMRといったPressure wireの指標、PETでの評価など
■病態
①微小循環障害による虚血
・内皮細胞障害、心臓交感神経系の異常、冠動脈小血管の異常などによると考えられている
…現在微小循環の検査手段が乏しく、正確に機序を推測できていない
・CAGでのmyocardial blush grade, NOやエンドセリン-1の異常、血管拡張薬への反応性低下
・β遮断薬が効く
・冠動脈に石灰化があり、狭窄が過少評価されている可能性
などが根拠となっている
②疼痛への感受性↑
・ドブタミンなどによる負荷時に、壁運動異常や血流低下は認めないが、疼痛が生じる
+右心内でのカテーテル操作だけで疼痛が生じる
⇒このような人は、疼痛の閾値が低く、それが胸痛の病態となっている可能性
…原因は、自律神経の異常(交感神経が優位)、内因性オピオイド活性低下など
■治療
・β遮断薬が最も症状コントロールに有効。Ca拮抗薬、ニトログリセリンも次に有効そう。
・ACE阻害薬、I-アルギニン(NO合成に必要なアミノ酸)、ホルモン補充療法(閉経後女性)、シルデナフィル(PDE5阻害薬)、運動トレーニングなども有効との報告あり
※アスピリン、スタチンに関するエビデンスはない
・基本的に予後良好な疾患なので、
⇒まず、疼痛時ニトロ舌下+運動トレーニングによりQOL改善を計るとよい
⇒1ヶ月経っても症状残存する場合、β遮断薬から開始していく
参照 UpToDate