★精巣下降と鼠径管形成は別の事なので,女性でも鼠径ヘルニアは起こる.
◎解剖の話です。
■発生の流れ
・精巣導帯を先頭に精巣が下降
⇒精巣導帯の経路に従い鞘状突起が発生,鼠径管を形成
⇒鼠径管内を通り,精巣が陰嚢内まで下降
■精巣の下降
・精巣は尿生殖間膜により,後腹壁に付着しています
⇒付着した膜が帯状になり,下生殖靭帯・精巣導帯となります(尾側へのびるよう付着)
※この時点では,精巣導帯は内・外腹斜筋の間で終わっています(腹腔外に出ていない)
⇒精巣が鼠径輪に向かい下降し始める!
⇒精巣導帯の腹腔外部が形成,陰嚢隆起へ向かって成長します
※精巣下降を制御する因子
①臓器の成長による腹腔内圧↑
②精巣靭帯の腹腔外部の発達→腹腔内部での移動↑
③精巣靭帯の腹腔外部の退行→腹腔外部での移動↑
■鼠径管の形成
※精巣下降とは別です.
・体腔の腹膜から、
⇒正中線の両側で前腹壁に向かって膨出します
⇒この膨出が,精巣導帯の経路に従って陰嚢隆起に入ります(鞘状突起)
※膨出内は腹腔内です。
⇒鞘状突起は体壁の筋・筋膜を伴って陰嚢隆起に膨出します
⇒これが鼠径管です。
■女性の場合
・尿生殖間膜⇒子宮円索,導帯となるが,導帯は未発達の状態に留まります
・卵巣下降は起きますが,移動距離は少ないです
・一方、鼠径管の形成は起きます(卵巣下降とは別だから)
※この際,鼠径管内に子宮円索が入りえます。
⇒つまり鼠径ヘルニアは生じえます。
参照 ラングマン