★炎症性サイトカインによる悪循環.
◎鉄関連の検査は日常診療でよく使います。その解釈は臨床医として基本知識ですが、病態までわかると治療につながります。
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貧血には、やはり鉄剤です。
■慢性炎症⇨貧血の機序
複数機序があります。
●ヘプシジン産生↑
....IL-6(炎症性サイトカイン)によるJAK/STAT3経路の活性化が原因
⇒①消化管からのFe吸収↓
⇒②マクロファージ内にFeトラッピング
⇒血漿Fe濃度↓
⇒③Feとトランスフェリンの結合阻害
よって、ヘモグロビン合成↓
⇒赤血球合成↓
※この機序の為,鉄不足時は鉄補給が有効です。
⇒トランスフェリン飽和度(TSAT)≧20%,フェリチン≧100を目標とします(後述)
⇒まず経口投与です.経静脈は議論が有ります。
…アレルギー,鉄過剰(実際にはまれ),手間とコストに対し,利益が微妙との話です
●炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,TNFα)↑
⇒①腎細胞のエリスロポエチン(EPO)発現↓
⇒EPO産生↓
⇒②赤血球前駆細胞のEPOレセプター発現↓
⇒赤血球前駆細胞アポトーシス
⇒EPOに対する反応性↓
よって赤血球産生↓
※この機序の為,慢性炎症による貧血にEPO投与が有用です。
(当然,原疾患の治療が最重要ですが)
●炎症によるマクロファージ活性化
⇒①赤血球貪食↑
⇒赤血球↓
⇒②freeなトランスフェリンを貪食
⇒トランスフェリン↓
これらが複合して貧血となります。
■TIBC,UIBC,TSATの検査についてまとめ
この計算式をよく使います。
・TIBC(総鉄結合能)=血清鉄+UIBC
・トランスフェリン飽和度(TSAT)=血清鉄÷TIBC
この前提は以下の通りです。
・鉄(Fe)の0.1%が血中にあります。
・血清鉄とは、トランスフェリンと結合したFeのことです。
・鉄と結合していないトランスフェリンがあります
⇨これが、UIBC(不飽和鉄結合能)です。
参照 UpToDateなど