★基本的に心筋症で、治療や予後はそれほどはっきり研究されていない。
■薬剤の種類
○アントラサイクリン系
・ドキソルビシン=アドリアマイシン(アドリアシン)
・ダウノルビシン(ダウノマイシン)
・エピルビシン(ファモルビシン)
・イダルビシン(イダマイシン)
・ミトキサントロン(ノバントロン)
機序:トポイソメラーゼ2とDNAに結合、アポトーシスを促す。
また、活性酸素産生する。
※トポイソメラーゼ2にはαとβが存在;癌細胞は主にαが過剰発現している
■副作用(心毒性)の機序
・心筋はトポイソメラーゼ2βを発現している
⇒薬剤の作用機序から、アポトーシス誘導される
⇒心筋障害
※コードする遺伝子をノックアウトすると、薬剤性心筋障害が起きにくい、という研究あり
・活性酸素↑
⇒細胞膜の脂質過酸化
⇒空胞形成、不可逆性障害
⇒線維組織への置換
※但し、free radical scavenger用いても予防/治療できないことから、否定的
■臨床的特徴
●発症時期
・基本は、最後の薬剤使用から1年以内(平均3か月)
⇒但し、5年以上経ってから発症する例もある
※急性の心筋障害はあるが、まれ
臨床的に問題となりやすいのは、遅い発症のもの;etiologyとして鑑別に挙げる必要あり
●心筋障害の特徴
・収縮能(EF)、拡張能の低下
⇒致死的となりうる
●危険因子
・総投与量が多い
…550mg/m2で26%が心不全となった
⇒一般的に投与量を450-500mg/m2としている
⇒ただ影響は個人差があり、300mg/m2以下でも発症しうる
・小児
・放射線治療
・同時期の化学療法:パクリタキセル、ドセタキセル、トラスズマブ
・造血幹細胞移植
●治療、経過、予後
・ACE阻害薬が第一選択薬
…基本的に一般的な心不全加療をすべき;+β遮断薬
⇒予防的投与のはっきりとしたエビデンスはない
・心不全症状あると予後が悪いことは分かっている
⇒しかし、具体的な予後は不明
※現在は心機能により投与中止としたり、投与プロトコルも定めている
⇒重症な心不全をきたす症例は少ない
参照 UpToDate