★鑑別困難な場合,鎮咳薬処方してよい.
■鑑別,診断基準
①感冒後咳嗽(感染後咳嗽)
診断基準は無い
②咳喘息
・咳嗽のみが8週間(3週間)以上持続,wheezeを認めない
・気管支拡張薬が有効
どちらも満たすこと.
③アトピー咳嗽
・乾性咳嗽が3週間以上持続
・気管支拡張薬が無効
・アトピー素因を示唆する所見,又は誘発喀痰中好中球増加
・ヒスタミンH1受容体拮抗薬又はステロイド薬にて咳嗽発作が消失
※非喘息性好酸球性気管支炎
・アトピー咳嗽と類似するが,喘息へ移行しうる点など異なる
⇒アトピー咳嗽の症例の一部+軽症咳喘息の症例の一部,と考えられる
④他,後鼻漏,GERD,ACE阻害薬,喫煙,上気道炎
■診断に有用な特徴
①感冒後咳嗽
・1~2ヵ月続く咳の,最も多い原因
⇒3ヶ月以内には軽快する
・鎮咳薬に反応する
・咳喘息とは違う病気
⇒風邪,というきっかけが同じであるだけ.移行はしない.
②咳喘息
・喘鳴が生じるほどでない,軽度の気管支収縮が原因とされる
・夜間~明け方に悪化する
・気管支拡張薬で咳が改善する
…本当は気道過敏性の亢進(喘息の特徴)の証明が必要だが,実用的でない
・プレドニン内服(20~30mg)が著効する
③アトピー喘息
・アトピーとはアレルギー素因のことをさす
⇒診断にアトピー性皮膚炎は全く必要でない
・のどのイガイガ感が特徴的
・気道の収縮は見られない
⇒気管支拡張薬は無効
・咳喘息ほど頻度は高くない
・ヒスタミンH2ブロッカーが有効
※②,③は増悪因子があることが特徴
⇒温度差,天候など
■実用的な対応
①ACE阻害薬,喫煙を除外する
②鑑別に迷った時,中枢性鎮咳薬を処方する
=感冒後咳嗽として対応
※積極的に疑われる疾患があれば,それに準じた治療を行う
③効かない場合,β刺激薬吸入
⇒効けば,吸入ステロイド+抗ロイコトリエン薬を処方
=咳喘息として対応
⇒効かなければ,H2ブロッカー処方
=アトピー喘息として対応
④効かない場合は,使っていない薬を使用
⑤効かない場合,他の疾患を考える
⇒特にGERD,結核など
⇒まず胸部X線
■鎮咳薬について
・メジコン(デキストロメトルファン)は有効
⇒3錠分3で効果ない場合,6錠分3~8錠分4で効くかもしれない
・ハチミツ(特に小児,就寝前)が鎮咳効果にエビデンスあり
・慢性咳嗽(=8週以上)にガバペン(ガバペンチン)が有効
・オピオイドも有効
参照 日内誌,寄り道呼吸器診療,UpToDate,薬の処方トレーニング