★心不全あるときは、β遮断薬でrate controlはじめるとよい。
◎クリニカルに問題となるのは、頻脈性心房細動でlow EF、心不全をきたした場合です。low EFの心不全に関しては、利尿薬に反応しない場合DOBやNOAを用いるのがオーソドックスですが、カテコラミンを用いれば、もちろん頻脈は増悪します。答えはβ遮断薬で、以下の機序によりこの場合はcardiac outputが増えるためです。
発作ゼロ・再発ゼロをめざす「心房細動」治療 [ 桑原大志 ]
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最新の治療では、再発率はかなり低くなりました。手技も簡単になりました。
■Afの心拍出量への影響
①Afに対する心室の反応が速い
(⇒持続すると頻脈性心筋症となります)
+心室が十分に収縮できない
⇒よってcardiac outputが減少
②心房キックがなくなる
⇒拡張期に心室が十分に満たされない
⇒cardiac output減少
※atrial kickは、拍出量の20%近くに影響すると言われます
.....ただし、これはもちろんrate controlでは戻りません
⇒最近、心不全患者にカテーテルアブレーションによるrhythm controlをすることで予後が改善したという論文発表があります。これは、この修飾によるatrial kickが、特にlow EFの場合は重要であることを示唆しています。
➡️N Engl J Med. 2018 Feb 1;378(5):417-427
■Afにrate controlかrhythm controlか
・結論は出ていません。
...上で紹介した論文が、初めて生命予後に有意差がでた大規模臨床研究です。
・最近は、クライオアブレーションによるAFの治癒率が上昇したことから、積極的にリズムコントロールをすることが検討されます。
⇒元気な患者ならもちろん、心不全患者は特に適応となるでしょう。
・循環器内科医の感触は、やはりリズムコントロールに勝ることはないというものです。
⇒AFをほっておくと、心房がリモデリングし、心房機能の低下のみならず、弁輪拡大による僧帽弁逆流(MR)となります
⇒こうなってしまっては、リズムコントロールはほぼ不可能
⇒かつ、MRに対する手術が必要となってしまいます。
・ただ一方、やはりアブレーション後に心房頻拍を繰り返してしまう方はいます。
⇒こういう方は、心房細動という表現型の心房心筋症だ、という考え方があります。
⇒これに関しては、今後の研究が待たれます
(一方、心室心筋症にはβ遮断薬がリモデリング予防に繋がることから、β遮断薬を飲んだ方がよいのかもしれません)
■実際のrate control治療
・第一選択はβ遮断薬
…特にメインテート(ビソプロロール)
…陰性変力作用あるので、low EFの場合は少量から始めます
⇒ただし、心不全急性期にも、上記機序から使います(最近はオノアクト)
これなしにrate controlはありえません。
・Ca拮抗薬(特にワソラン)
⇒有名ですが、陰性変力作用あり、low EFには使いにくいです。
⇒AFのみの健康な方で、リズムコントロールしていない方、もしくは発作性心房細動の発作時に使います。
・ジゴキシン
⇒生命予後を短縮するため、長期の使用はだめです。
⇒しかし、入院中rapid AFの短期的使用は問題ありません(ivで使えます)。
・アミオダロン
⇒リズムコントロール用の薬剤ですが、rate controlにも使えます。
⇒アミオダロンは、EF低下時に唯一使える抗不整脈(βをのぞいて)と言って良いです。
⇒甲状腺機能、間質性肺炎に注意して使っていきます。