★アルコール性心筋症を考え、かなり積極的に禁酒を指導する。
◎でも禁酒させるのは難しい。
■アルコール性心筋症とは
●臨床像
・moderate drinkであれば、むしろ心血管系に保護的に働くとの報告あり
(moderate drink; 女性は7杯/週未満、男性は14杯/週未満)
⇒moderate drink以上だと、アルコール消費量と心不全発症/死亡率は指数関数的に相関する
・アルコール性心筋症は、典型的にはアルコール80g/dayを5年以上でリスクとなる
(平均で15年間との報告あり)
⇒エタノール消費量のみと関連し、アルコールの種類には関わらない
●機序
・アルコール→アセトアルデヒド
⇒ミトコンドリア機能不全、酸化ストレス、カルシウムイオンの恒常性障害
エタノールの直接障害;アポトーシス誘導など
⇒心筋障害
・遺伝要因も関連(DD polymorphism)
※アルコール消費に伴う栄養失調(脚気心)とは別の機序
参照;http://blog.livedoor.jp/megikaya/archives/22664970.html
■診断
●DCM like heartの鑑別診断
・拡張型心筋症、アルコール性心筋症、虚血性心筋症(多枝病変)、サルコイドーシス、ヘモクロマトーシス、アミロイドーシス、ドキソルビシン関連心筋症など
⇒はっきりとしたマーカーがない疾患も複数ある
⇒基本的に、下記の特徴を満たし明らかな他疾患がないものをアルコール性心筋症と診断
⇒経過(アルコール減量に伴うEF改善)で確認する
●アルコール性心筋症の特徴
・心機能低下あり;壁運動のdiffuseに低下、壁厚薄い
…EFが低下する前にも、アルコール消費によるmild diffuse hypokinesisが認められる
・冠動脈疾患、サルコイドーシスなど、他の原因疾患が除外される
※「肝硬変に伴う心不全」という疾患もある
…これはアルコールとは関連せず、high outputの心不全
・アルコール多飲歴あり(上記)
■予後と治療
●禁酒が最も重要
・6ヶ月の禁酒で、EF, LV径がほとんど正常化したとの報告もある
・飲酒量を減らす(60g→20g/day)ことでも心機能改善が見込める
※予後は飲酒量と強く関係する!
…禁酒できればDCMより予後はかなり良いが、飲酒を続けるとかなり悪い
●他
・心機能低下に対する基本的な加療は必要
…β遮断薬、ACE阻害薬、利尿薬など
・大量飲酒に伴うビタミン不足に注意する;B6, B12, 葉酸
⇒サプリメントで補うことも考慮
・低カリウム、低マグネシウムにも注意
参照 UpToDate