★VVIとVVTの違い、DDIとDDDの違いを理解する。
ペースメーカーの設定は、結構わかりにくいと思います。
これをしっかり理解している研修医は本当に稀です。
「国際ペースメーカーコード」に基づく名前の付け方、それぞれの特徴を抑えましょう。
*特にDDIとDDDの違いは重要です。
■ペースメーカーの設定:基本
★「国際ペースメーカーコード」に基づく。
✅1文字目:刺激電極の位置
…A(心房)、V(心室)、D(両方)
✅2文字目:感知電極の位置
…A(心房)、V(心室)、D(両方)
✅3文字目:自己心拍を感知した際の応答(★)
…T(Trigger 同期):その時点で刺激を与える
I(Inhibition 抑制):次の刺激を取り消す
D(両方)
TriggerとInhibitionの違いが慣れないと混乱しがちです。
基本的には、自己心拍が感知されなければ設定通り刺激される、という前提にあります。
…自己心拍の上に刺激してしまうと危険だからですね
(★の機能をデマンド機能といいます)
・これに加え、「心房、心室間で同期させる」機能をTracking機能といいます。
…心房収縮 or 心房ペーシング によります。
⇒このため、房室 delay(AV delay)を設定します
⇒刺激(AV delayの間に心室の自己心拍が感知されると、心室刺激を抑制)
⇒これがあるかないかが、DDIとDDDの違いなのです。
■主なモードの特徴
今や基本はDDDで、時々VVIやVDDをみる、という感じだと思います。
①VVI(とVVT)
・設定した回数より心室の自己心拍が少ないときのみペーシング、そうでなければペーシングしない
→純粋な房室ブロックに使います。
・右心室に1本のリードのみ
→DDDは2本のリードが必要だけど・・・ということ
(房室ブロックに洞不全が合併しないことを見越せないと、DDDとした方が安全ですよね)
※VVIとVVTの違い
・自己心拍をセンシングした時、VVIはトリガーなし、VVTはトリガーあり
⇒しかし、VVTのトリガーは心室絶対不応期と重なり、結果的に自己収縮のみとなる
⇒つまり、VVIとVVTの働き方は同じ
⇒しかしVVTは電力消費が多いため、現在使われない
②AAI(とDDI)
・AAIはVVIの心房バージョン
=設定した回数より心房の自己心拍が少ないときのみペーシング、そうでなければペーシングしない
→純粋な洞不全症候群に使います
*ただ、そういう方は房室ブロックのリスクも高いので、普通はDDDです。
・DDI=VVI + AAI
⇒心房か心室のどちらか収縮すれば、刺激はお休み
→右心房、右心室に1本ずつのリード
*DDDが基本ですが、AFを合併した場合、A刺激に対しV刺激をtrackingすると大変なことになる(心室頻拍となってしまう)ので、DDDからDDI又はAAIにスイッチされます。
③VDD
・センシングはAとVだが、刺激はVのみ
⇒これでも右心室に1本のリードで済む(リード先端でなくとも、Aの刺激を感知できるため)
・心房の自己脈がある前提のtracking機能
=洞結節が正常の場合、DDDと同じ!!
・しかし、Aをセンシングしない(アンダーセンシング)と、VVIと同じになってしまう
・よって、2本のリードも入れたくない高齢者に適応(今やほとんどない)。
④DDD
・完全なtracking機能を持つ、ペースメーカーの基本。
✅心房収縮あり、その後心室収縮無ければ、心室収縮をトリガー
✅心房収縮無ければ、それもトリガー
・右心房と右心室に1本ずつのリード