ICU・集中管理 呼吸器

VAPの機序と診断:挿管+発熱+浸潤影ではVAPと言えない!

★3日以上+呼吸状態悪化+質の良い培養陽性。

■人工呼吸器関連性肺炎(VAP:ventilator-associated pneumonia)の重要性は、そこまで高くない
・致死率は5-65%と幅広い
死亡と直接に関連する、というエビデンスは無い
⇒呼吸器離脱まで、ICUでるまでの期間が延びるが、致命的疾患とはいえない


■VAPの機序⇒予防

中咽頭に常在している菌が原因のほとんど
⇒挿管後4日以内に発症するVAPが多いが、これは挿管時にこの菌が引き込まれるため
●よって、口腔内除菌(口腔ケア)は、予防に最も重要

②原因菌は、挿管チューブにコロニー形成、バイオフィルム形成する
バイオフィルムは、菌のそれ以上の増殖を抑える働きがある
●サクションはバイオフィルムを壊す
⇒それ以降の下気道へ細菌を運ぶ
ルーチンにサクションする事は推奨されない!

カフの隙間からも、下気道へ唾液が入り込む
 …カフは膨らませても、完全にシールドできないということ
⇒3/4は無症候性
連続的なカフ上サクションは、VAPを予防するため推奨される


■VAPの診断に胸部Xp、考えの無い痰培養は全然使えない!

●胸部レントゲン
・そもそも、レントゲンの質が悪い
 …ポータブルだから+吸気不十分なことも多い
⇒浸潤影が見えない肺炎たくさん+血管影が浸潤影にみえることがよくある
・ICUでは、浸潤影のうちたった1/3が肺炎
…他に多い原因は、肺水腫、ARDS、無気肺

●痰培養
サクションで引いた痰の培養
⇒VAPに対して感度90%、特異度15-40%
⇒陰性で否定できるが、陽性でも診断はできない
 …痰の質も問題。参照:BALで引いた痰の培養
⇒VAPに対して感度70%、特異度80%
⇒陽性で診断に使える


■信頼できる、VAPの診断基準(National Health Safety Network algorithm)

①⇒②⇒③と進む。
①人工呼吸器関連状態(VAC:ventilator-associated condition)

・2日間に渡って、FIO2 20%/dayか、PEEP 3cmH2O/dayの増加

②感染に関連した人工呼吸器合併症(IVAC:infection-related VAC)

・①を満たし、挿管後3日以上で、BT>38℃ or <36℃ かつ WBC<12000 or <4000
 
③VAP疑い

・②を満たし、以下のどちらかを満たす
1)引いた痰がGram染色で好中球>25 かつ 扁平上皮<10で、かつ以下のいずれか
・サクション:105CFU/mlの培養陽性
・BAL、組織、PSB:104CFU/mlの培養陽性
※常在菌、カンジダ、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌は除く
2)以下のいずれか
・胸水培養陽性
・肺病理で陽性
・迅速検査陽性:レジオネラ、インフルエンザ、アデノ、RS、ライノ、コロナ、HMV

参照 ICU book

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