腎・泌尿器

透析中に生じる色々な合併症の機序と対処

★低血圧(25-55%), 筋けいれん(5-20%), 嘔気嘔吐(5-15%), 頭痛(5%), 胸痛背部痛(2-5%)。

■低血圧
・最も多い急性合併症
・別記事参照


■筋けいれん

・機序:一部の筋で繊維束性攣縮(神経原性)→高頻度の活動電位へ発展
・病因:有効血漿量↓低Na、組織低酸素、低Mg、カルニチン欠乏、レプチン↑
 …前2つが特に重要:流量↑や透析液の低Naで頻度増える
・治療
 …同時に透析低血圧が生じている場合:透析低血圧の対応
  他の対応;血漿浸透圧↑=高調食塩水 or 50%デキストロース投与
       暖める、マッサージする
・予防:透析間の体重増加を減らす、透析低血圧を予防、透析液Na濃度↑、カルニチン補充、ビタミンE投与、芍薬甘草湯投与

■頭痛、嘔気、嘔吐
・低血圧とは関係なく生じうる
 ⇒他、電解質異常、低血糖、硬膜下出血、薬剤性頭痛を除外する必要あり
・透析が長く大量に除水している患者で起きやすい
 …尿素を除去するスピードが早い事が原因か
 ⇒急に血漿浸透圧が下がり、自由水が脳へ行ってしまう
カフェイン摂取が増悪因子となる


■胸痛

狭心症、ACSをまず疑う
・透析を継続する場合
酸素投与、アスピリン投与、除水速度↓、ニトロ製剤やモルヒネの投与を検討する
・ニトロやβ遮断薬の前投与で予防できる
⇒しかし透析低血圧になりやすくなり、結果的にあまり引けなくなる

溶血
・胸痛や背部痛を呈しうる
・早く気づかないと、高K血症で致死的となりうる
 ⇒静脈血がポートワイン色となることに気づく
基本的には透析方法が原因
⇒加温しすぎ、透析液の調度が低すぎ、水やチューブからのコンタミネーション(ホルムアルデヒド、漂白剤、クロラミン、硝酸塩)、機械の不備(物理的溶血)
・対応:透析中止、高カリウムと貧血への対応

●空気塞栓
・透析装置で空気は除去されるので、不備がなければ基本的には起こらない
・肺塞栓と同じ症状
 +チューブ内の血液が泡沫状となることに気づく
・対応:透析中止、左側臥位、全身管理

●不整脈

・心臓の基礎疾患がある患者に起きやすい
⇒透析による体液量や電解質バランスの変動、低酸素血症が誘因か
(カリウムの影響についてはcontroversial)
・一般的な不整脈の対応と同じ


■呼吸困難

●透析前からあるもの
・基本的にはvolume overload

●透析後に生じたもの
・狭心症、ACS、菌血症、肺炎、透析装置への生理反応
・薬剤アレルギー:静注鉄剤、ヘパリン(HIT→回路内血栓)

参照 UpToDate 

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