★倫理的問題だが,いくらかの経験則はある.
◎現場ではなんとなく決まることが多い印象ですが、ACLS-EPという講習のテキストに書かれています。ちなみにACLS-EPとは、ACLSの更新用の1日講習です。非常に勉強になります。
■心静止(Asystole),無脈性電気活動(PEA)の定義
・PEA:機械的収縮はあるが,弱すぎて血圧・脈圧とならないものです。
⇒治療可能な病態は同定,是正すべき(6H6Tに代表されます)
・Asystole:収縮が全くないもの
⇒ECGでフラットラインを示します。
※PEAは戻る可能性がありますが、心原性の場合は非常に厳しいです。少なくともすぐには戻らないのでPCPSを入れます。
AsystoleかPEAの場合に、組成中止というオプションが出てきます。
■Asystole, PEAの治療法
⇒ACLSプロトコルの右側です。
…ショック適応(VF)とならない限り,CPR+アドレナリン1mg ivを3~5分おき
※背景
①ショック
・ショックの原理は、一度心臓を止めて、sinusから自動的に洞調律に復すことを期待する手技です。
⇒よって、完全に心臓が止まっているAsystoleに対しては意味がありません。
・しかしAsystoleも幅があります
⇒具体的には、細かいVF(fine VF),隠れたVF(Asystoleだが,電極と90°の方向で心筋が活動していると思われるもの)に対して,ショックが使えるのではないか?との議論がありました
⇒2つの試験で,ショックは有害との結論
⇒よって、大体波形がない場合、ショックは使用しないほうが良いとのことになりました。
②アドレナリン
・実は、生存率改善のエビデンスがありません!
・除細動器より以前に,蘇生プロトコルに組み込まれていました。
・高用量アドレナリン(0.2mg/kg)
⇒心臓の再起動には効果がありそうだが,蘇生後の脳機能は悪い
⇒容認できるが,推奨されません。
※今は、経験的にアドレナリンが使用されています。実際はアドレナリンにより、確かに心臓が動くことを期待することができます。
③他の薬剤
・バソプレシン:生存率向上効果はアドレナリンよりも高い可能性
⇒推奨するに足るエビデンスはない
・アトロピン:心静止は迷走神経,副交感神経の過剰な緊張によると考えられる
⇒アトロピン投与は合理的
⇒推奨する十分なエビデンスはないが,
0.04mg/kgに達するまで1mg×3分ごとの投与はいいかも
ということになっています。なのでガイドラインに乗っています。
※なんとなくバソプレシンが良さそうな場合があります
■いつ蘇生を中止するか
●本題ですが、少なくとも,以下を達成する必要があるとされます。
・ACLSを適切に行った
・気管挿管し,有効な換気を行った
・VFの場合,ショックを施行した
・静脈路確保した
・アドレナリン,アトロピン静注施行した
・治療可能な原因を全て治療or除外した
⇒この後,5~10分以上続く心停止を確認した。
●一方、以下の特殊な状況を除外する必要があります(蘇生を中止しない)
・若年者
・毒物,薬物の過量投与がある
・超低体温,冷水に水没している
・自殺を試みた
・近くにいる家族や友が蘇生中止に反対している
●以上確認された場合,蘇生中止は適切です.
…院内まで運ばなければならない,というエビデンスはないのです!現場でのACLSで蘇生できなければ救急部においてもかなり難しいです.
参照 ACLSリソーステキスト