★それぞれ理由がある.
◎内鼠径か外鼠径か、由来は発生・解剖学によります。
■名前の由来
○鼠径管
... 精索・精巣動静脈が通る管で,「腹腔内→内鼠径輪→外鼠径輪→睾丸」と交通します
○鼠径ヘルニア
... 腹腔内臓器が鼠径管へ飛び出した状態
●「外」か「内」か
... 下腹壁動静脈より外側か内側か,ということに由来
※外・内鼠径輪とは関係ないのです!
■外鼠径ヘルニア (indirect hernia)
・腹腔内臓器が「腹腔内→内鼠径輪→外鼠径輪→睾丸」
・原因:先天的に内鼠径輪が閉じていないか,後天的に内鼠径輪が開いてきてしまうか
=腹膜鞘状突起が閉鎖していないことによります。
参照:http://blog.livedoor.jp/megikaya/archives/30967399.html
■内鼠径ヘルニア (direct hernia)
・内鼠径輪周囲の体幹正中よりの部分は,腹壁が弱い(ヘーゼルバッハ三角)
⇒そこから鼠径管へ突き抜ける
※後天的な原因は,コラーゲン合成不全(特にⅠ型,Ⅲ型)が多くを占めるか,と言われています。
■手術の意義
・医学的には「ヘルニア陥頓の予防」のみ。
陥頓:脱腸した場合,静脈・リンパ還流が阻害+腸管浮腫発生によります
(このとき初めて疼痛を伴います。)
※陥頓は発症してすぐに起きやすいです:3ヶ月で2.8%,2年で4.5%
⇒時間が経つと穴が広がり,出やすく戻りやすくなるため。
■手術の合併症
①感染
・ほとんど起こらない:予防的抗菌薬投与は必要ありません
・メッシュに感染した場合
⇒抗菌薬で治り得ます;(取り除く手術が必要ない事もあります)
②血腫・水腫
・割と頻度が高いです。
・ヘルニア嚢を取った空間に溜まります。
・大部分は自然消褪する+ドレナージ著効するため,重大な合併症ではないです。
⇒但し,ヘルニア再発と紛らわしいことがあります
③慢性疼痛
・ある程度太い神経の損傷,オンレイパッチによる圧迫が原因です
⇒腸骨鼠径神経,陰部大腿神経が多い
⇒ばっさりきちんと切離すれば,慢性疼痛は起きにくいです。
④再発
・同側
⇒すぐ(人工物壊れた,動きすぎ)
or 6ヶ月~5年(手技が未熟だった)
or かなり経ってから(自然の変化)
・対側
⇒同側へ逃げていたテンションが反対側へかかることによります(広義の再発)
参照 UpToDate
更新2013/12/26