★RAAS系亢進が悪だから。
心不全とRAAS系亢進の悪循環の機序を理解しましょう。
ACE阻害薬はRAAS系を抑制するのが良いということです。
徐々に増量させますが、欧米と比較し用量は少なめです。
なお、現在はACE阻害薬より効く薬が出てきています。
■「心不全⇒RAAS系亢進」の機序
・心不全
⇒交感神経↑(詳細こちら)、腎血流↓(心拍出量低下のため)、遠位尿細管の緻密斑へ届くNa↓(同様)
⇒JG細胞からレニンが放出
⇒レニンは、肝で合成されたアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠへ変換
⇒ACEによりアンギオテンシンⅡへ変換
⇒アンギオテンシンⅡが2種類のAT受容体へ結合
AT1:血管収縮、細胞成長促進、アルドステロン/カテコラミン分泌
AT2:血管拡張、細胞成長抑制、Na利尿、ブラジキニン分泌
※血管にはAT1受容体がほとんど、心筋にはAT2が2:1で多く分布
■「RAAS系亢進⇒心不全増悪」の機序
✅アンギオテンシンⅡが持続的に発現
⇒心筋/腎臓の繊維化、交感神経からノルアドレナリン放出、副腎からアルドステロン分泌
✅アルドステロンが持続的に発現
⇒血管と心筋の肥大/繊維化、内皮機能障害、化学受容体機能障害、NE取り込み阻害
これら全てが心臓に悪影響を与えます。
※なお、アンギオテンシンⅡ、アルドステロンの生理的意義は
一時的に発現することで、体液量を保って循環サポートすること
です。
つまり「持続的な」発現が悪いため、ACE阻害薬で抑えると良いのです
■ACE阻害薬のエビデンス
どれも1990年代のエビデンスです。
・無症候性心不全が、症候性となる/入院となる のを予防する (SOLVD, SAVE, TRACE study)
・症候性心不全/心筋梗塞後心不全の死亡率を減らす (CONSENSUS Ⅰ study)
心不全への効果は確立されているといえます。
*今や「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi)」という、ARBとネプリライシン阻害薬の合剤(商品名:エンレスト)の方が、ACE阻害薬よりも心不全の予後をよくするというエビデンス(PARADIGM-HF)が出てきており、第一選択となりつつあります。
■ACE阻害薬の使い方
・利尿薬の量を調整
⇒低容量から導入
⇒3-5日に2倍程度で増量
⇒多ければ多い程、再入院率を減らす(普通β遮断薬と併用し、その場合低容量でも大丈夫)
⇒1-2週間後、血圧、腎機能、Kをチェック
…低血圧、高BUNはある程度許容。
めまい、Cre上昇ある場合は漸減を検討。
咳がつらい時も (ARBでなくACE阻害薬で咳が生じる理由)。
⇒中止するときは徐々に減らす
※ただし、どのくらい効いているのか、手応えみたいなものはわかりにくい薬剤です。