★クエン酸回路関連で神経障害、血管拡張により心不全をきたす。
ビタミンB1欠乏による様々な疾患。
具体的には神経障害、ウェルニッケ脳症、心不全、代謝性アシドーシスなどがあります。
現象としては有名ですが、その機序は少し複雑です。
理解には、生化学の理解が必要です。
■「ビタミンB1欠乏→代謝性アシドーシス」の機序
★クエン酸回路から説明される
・ビタミンB1(サイアミン、チアミン)はピルビン酸⇒クエン酸回路での代謝に必要
よって:
B1欠乏
⇒乳酸,ピルビン酸の蓄積
⇒代謝性アシドーシス(酸がたまるので)
参照: 代謝性アシドーシスの分類,病態
■「ビタミンB1欠乏→神経障害」の機序
★解糖系から説明される
・グルコース⇒(好気的解糖)⇒ピルビン酸である。
・神経系はグルコースをほぼ唯一の燃料としている。
よって:
B1欠乏
⇒ピルビン酸がクエン酸回路に行かない = 解糖系が回らない
⇒グルコース = 神経系のエネルギー源がない
⇒末梢神経障害
神経以外の多くの組織は,脂肪もクエン酸回路の燃料として利用できます
■「ビタミンB1欠乏→心不全」の機序
★血管がうまく収縮できなくなるため。
・B1欠乏
⇒血管運動作用を低下
⇒血管抵抗↓
⇒静脈還流↑
=心臓の前負荷↑
⇒これが長く続くと・・・・
⇒高拍出性心不全
(左心室の機能に問題はないが、拍出しなければならない血液量が多すぎるため、左心室が対応できなくなった状態)
心筋肥大も起きるが,直接的なメカニズムは不明(二次的だと思われる)
■「ビタミンB1欠乏→Wernicke脳症」の機序
★はっきりとした機序は不明。
・基本的には「アルコール依存症患者+それによるB1欠乏患者」にみられる
→かつ、その一部の患者にしかみられない
⇒遺伝的要因が考えられている
... トランスケトラーゼの活性低下(ペントースリン酸回路で必要)など
補足:「アルコール依存⇒ビタミンB1欠乏」の機序
いくつか機序がある。
・栄養不足
⇒B1欠乏
・慢性下痢+尿からMg排泄↑
⇒低Mg血症
⇒MgはB1の補因子(サイアミン⇒サイアミンピロリン酸に必要)のため
⇒B1が使えない
参照 UpToDate、GUYTON生理学(最高の生理学の教科書)