★Swan-Ganzカテーテル法から分かる事まとめ。
右心カテで予後を変えない、ということだけ知っているレジデントが多いですが、それはエビデンスの解釈を誤っています。
当然使えるシチュエーションはあります。
右心カテの勉強から逃げてはいけません。
それぞれのパラメータにわけて、わかりやすく解説していきます。
右心カテーテル:圧波形の読み方、評価法
「右心カテーテルで予後は変わらない」
誰しも一回は誰かに聞く議論です。
でもそれは
「誰にも右心カテを使う意味はない」
という意味では、決してありません。
臨床研究でわかることは「対象集団に対する健康効果」であり、
「平均的には予後との関連はなかった」
というのが正しい解釈。
つまり個別の患者レベルでは「使った方が良いsituation」が確かにあります。
*EBMのわかりにくい所です
右心カテの勉強から逃げてはいけません。
この記事では、肺動脈楔入圧、肺動脈圧、右室圧、右房圧にわけて、わかりやすく解説していきます。
■肺動脈楔入圧 PAOP, PAWP, PCWP
●PAWPの生理
・2峰性の波;a(山)、x(谷)、v(山)、y(谷)
⇒a(心房収縮)、x(心房圧↓)、v(心室収縮による心房充満)、y(M弁開放)
※a波のすぐ後にc波(山)見られうる;僧帽弁閉鎖を意味する
●PAWPの正常値
a波 (3-15mmHg)、v波 (3-15mmHg)、平均 (2-10mmHg)
→とりあえず「平均 10mmHg」を覚える
・基本的に左室拡張末期圧 (EDP) を推定する目的です(PA〜LVの経路に異常がない前提)
*「EDPが上がること=心不全」なのでした(参照こちら)
●PAWPの異常
①PAWP高値
…左心不全、僧帽弁/大動脈弁異常、肥大型心筋症、hypervolemia、右左シャント、心タンポナーデ、収縮性心膜炎
②PAWP低値
…hypovolemia、肺塞栓
③a波大きい:左室充満しにくい、ということ
…MS、左心不全、volume overload、MI→コンプライアンス↓
④v波大きい:左房容量負荷
…MR、MIに伴ったVSD
■肺動脈圧 PAP
●PAPの正常値
収縮期 (15-25mmHg)、拡張期 (8-15mmHg)、平均 (10-22mmHg)
PAP高値で肺高血圧を診断することが重要です。
●PAP高値
・急性疾患
…肺塞栓、低酸素による肺血管収縮
・亜急性
…基礎に心/肺疾患を持つ患者の低酸素による肺血管収縮
・慢性
…肺高血圧症(以下の5分類)
Group1:肺動脈高血圧(特発性、膠原病、先天性心疾患)
Group2:左心疾患(左心不全、僧帽弁疾患)
Group3:慢性肺病変(肺気腫、間質性肺炎)
Group4:慢性肺塞栓症
Group5:その他(鎌状赤血球症など)
■右室圧 RVP
●RVPの正常値
収縮期 (15-25mmHg)、拡張末期 (3-12mmHg)
基本的には「右心不全」のマーカーです。
●RVP高値
①肺血管/肺動脈弁異常
…肺高血圧、肺塞栓、肺動脈弁狭窄
②右室疾患
…心筋症、右室梗塞、心タンポナーデ、収縮性心膜炎、肺高血圧による右心不全
※拡張末期圧↑のうち、拡張早期に圧が落ち込むものを「dip and plateau」と言います
=収縮性心膜炎の所見でした:機序はこちら参照
■右房圧 RAP
●RAPの生理
・2峰性の波;a(山)、x(谷)、v(山)、y(谷)
⇒a(心房収縮)、x(心房圧↓)、v(心室収縮による心房充満)、y(T弁開放)
※a波のすぐ後にc波(山)見られうる;三尖弁閉鎖を意味する
…PAWPとほぼ同じ解釈です
●RAPの正常値
a波 (2-10mmHg)、v波 (2-10mmHg)、平均 (2-8mmHg)
基本的には「右房に負荷がかかっている」「静脈系にvolumeが多すぎる」診断に使います。
●RAPの異常
①RA圧↑
…右室疾患、肺高血圧、肺塞栓、左右シャント、三尖弁疾患、心タンポナーデ、
収縮性心膜炎、拘束性心筋症、左心不全、hypervolemia
②RA圧↓
…hypovolemia
③v波増高
…基本的にTR
④巨大a波:三尖弁閉じている時に、心房と心室が同時に収縮した場合
…VT、V pacing、完全房室ブロック、AVNRT、三尖弁狭窄
⑤a波消失
…Af, AFL
参照 UpToDate、新・心臓診療プラクティス