★キニン類が蓄積するため。
基本的な事ですが、意外に知られていないのでまとめました。
作用機序が異なり、ACE阻害薬ではブラジキニンが蓄積→気管支刺激される、からです。
■ACE阻害薬とARBの作用機序の違い
①ACE阻害薬
主に二つの経路があります。
・「Ang(アンジオテンシン)Ⅰ ⇒ AngⅡ」を阻害
⇒AngⅡ↓
⇒AT1,AT2受容体の両方との結合↓
・「キニン→不活性物質」を阻害(ACEはキニナーゼとも呼ばれます)
⇒キニン↑
⇒「キニン→ブラジキニン」(側副路)
⇒ブラジキニン↑
②ARB
・AngⅡ受容体のうち,AT1受容体を阻害
⇒AngⅡ↑
※AT2受容体は刺激されます!
⇒AngⅡ受容体
*AT1受容体とAT2受容体の違い
AT1受容体
・血管収縮、アルドステロン分泌 → 血圧上昇
・間質細胞増殖、心筋細胞肥大 → 心肥大
AT2受容体
・血管拡張 → 血圧低下
・間質細胞増殖抑制、心筋細胞肥大抑制 → 心肥大抑制
■ACE阻害薬の副作用
1:低血圧
RAS系の阻害によります。
2:腎機能低下
腎動脈狭窄,高血圧性腎症,心不全,慢性腎不全,多嚢胞腎の場合
⇒流入血流量が少ないです
⇒AngⅡによる輸出細動脈収縮で濾過量維持しています
⇒AngⅡの反応↓で濾過量↓
⇒腎機能障害
※ACEが減ることで、でAngⅡは急に低下します
⇒しかし、Creは2.3日で上昇です。
⇒ACE阻害薬開始後3.5日で腎機能チェックすべき、ということです
⇒また、6~8週以内でCre・Kの上昇抑えられない場合,中止すべきです。
※ただ、両側腎動脈狭窄,血管内脱水がなければ,中止になることは稀です.
(そうでないとここまで広まっていません)
3:カリウム上昇
RAAS系↓によるアルドステロン↓,又は腎機能障害によります。
4:空咳
ブラジキニンが気管支のC繊維受容体を刺激、空咳を生じます。
※ただ特定の患者にしか生じないため、遺伝要因の関与が考えられています。
5:血管性浮腫
ブラジキニン↑,サブスタンスP↑,Des-Arg9-BK(ブラジキニンの代謝物)↑
⇒血管拡張,血管透過性↑による
⇒血管拡張
■ARBの副作用
1~3は同じ
4:空咳は生じにくいとされる(ブラジキニン増えないため)
⇒ただしゼロではないらしいです
(経験したことはあまりないですが)
5:血管性浮腫
機序は不明.キニン以外の物質が関与しているとされます。
*歴史的に、海外はACE阻害薬から使われてきてエビデンスがあるため、よく使われています。
*心筋梗塞後のリモデリング予防の際などではACE阻害薬のARBに対する優位性はありません。
参照 J Am Coll Cardiol. 2015 Mar 17;65(10):1029-41.