電解質異常

高K血症でQT短縮、wide QRS、P波消失、VFが生じる機序

★高カリウムにより遅延整流性カリウムチャネルが開くことが重要。

◎電位の話は難しいですが、高K血症の変化を理解する事は、心電図変化や治療につながるので重要です。

◎2018/10/28 重要な更新:■なぜ細胞外Kが高いと静止膜電位が上昇するか を追加。

■一般的な心筋の活動
①脱分極=収縮
・(細胞内に)Na流入(電位依存性Naチャネル
②プラトー
・Ca流入(電位依存性Caチャネル)+K流出遅延(ちょっと流出,内向き整流性Kチャネル)
③再分極
・K流出(遅延整流性Kチャネル
⇒膜電位が下がる
⇒静止膜電位の形成(内向き整流性Kチャネル)

■カリウムとQT、T波
・高K血症
⇒NaKポンプの機能↑
⇒細胞内Kが高くなる
遅延整流性Kチャネルが開きやすくなるK流出しやすくなる
再分極の時間が減る
⇒T波の幅が狭くなる(QT短縮
その分T波が高くなるテント状T)

※T波増高とは、QT短縮の結果なのです!


■高Kの他の心電図変化

・細胞外Kが高い
静止膜電位が上昇する(元は-70くらいだが,0に近づく=電位差が少なくなる):★詳細後述
(⇒脱分極しやすくなる、と思うが、違う)
⇒静止膜電位上昇により、電位依存性Naチャネルが開きにくくなる
 (電位依存性なので)
脱分極しにくくなる、鈍化する
⇒Rの幅が広くなる(wide QRS)
 伝導障害(房室ブロック
⇒更に進行、Naが流入しなくなる
⇒細胞内に残っているCaのみで脱分極する
P波消失持続的な収縮(心室細動、VF)

■なぜ細胞外Kが高いと静止膜電位が上昇するか
・細胞内と細胞外に、それぞれの境界に膜があります
静止膜電位とは、イオンの動きが平衡の時の、細胞内側の膜の電位です
 (イオンは絶え間なく動いています)
⇒例えば、細胞内がプラスに偏ると、膜の電位はその逆のマイナスに偏ります
⇒逆に、細胞外がプラスに偏ると、細胞外側の膜の電位がマイナスに偏るため、細胞内側の膜の電位=静止膜電位はプラスに偏ります。

●これを定量化したのがネルンストの式です。
⇒それぞれのイオン(K, Na, Cl等)の膜電位を計算できます
⇒ただし、実際の静止膜電位はすべてのイオンを総合して計算されます
⇒これを可能にしたのが、ゴールドマン・ボジキン・カッツの式です
※ただし、イオンの透過性はKが高く、静止膜電位はKによりほぼ決定されます。

●高カリウムの場合、
細胞外側のKイオン濃度が高い=プラス
▶細胞外側の膜の電位はマイナス
▶細胞内側の膜の電位はプラス
▶静止膜電位は上昇、となります。

NaKポンプで細胞内Kも上昇しますが、これは二次的なもので、細胞外Kが上昇したほど細胞内Kは上昇しないので、相対的に細胞外Kのイオン濃度が高い、ということになります。

参照 Braunwald, UpToDate

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